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翻訳 浦辺千鶴 コメント

リチャード・カリノスキーは、アルメニア人である前妻の祖父母から迫害の体験談を聞いたことがきっかけで「月の獣」を書いた。ただカリノスキーはこの作品をアルメニア人の迫害そのものについてではなく、「その後の愛の物語」であり、この「愛」が作品を書く原動力になったと語っている。

ただし、いつの時代も愛は一筋縄ではいかない。この作品でも、愛にまつわる様々なすれ違いに苦しむ二人の姿が描かれている。理想の夫、理想の妻、理想の家族・・・そういった色々な想いと現実との差を埋めようと必死にもがく二人の姿は、時に痛々しく、時に滑稽で、そしてとてもいとおしい。

この作品の設定は100年も昔だけれど、今も毎日ネットやニュースではアラムやセタと同じようなことに悩み、もがいている人々の姿を伝えている。正解は一つではない。「こうでなければならない」「こうあるべき」、そんな考え方から離れられれば、様々な幸せの形が見えてくる。アラムとセタの二人が最後にたどり着く愛の形に励まされる人もきっと多いと思う。
浦辺千鶴






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